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8年目の家【モーリフォトエッセイ#2】

こんにちは。季節の変わり目に扁桃炎になりました。フォトグラファーのモーリです。

8年目の家

モーリフォトエッセイ#2

21歳のときに家出のような勢いで実家近くにボロアパートを借りた。初めての一人暮らし。南向きの窓で陽がよく入る。探していた条件にぴったりで、映画に出てきそうな外観ということと、窓の外にトトロが座ってそうな形の木が生えていることが決め手になった。もともと和室だったのを洋室の床にリフォームしたような作りで、昭和のキラキラが施されたガラスが使われているところも気に入った。内覧してほぼ即決だった。

当時のバイト先の人たちに隣人への挨拶の仕方を聞くと、「若者の一人暮らしは逆に危ないから挨拶しないよ」とほぼ全員に言われ、大家さんにだけ挨拶した。

お湯の出ないキッチン

モーリフォトエッセイ#2

私の住み始めたアパートはキッチンから冷水しか出なかった。当時21歳の私はあたりまえにキッチンはお湯が出ると思っていたけど、出なかった。秋になると洗い物がどんどんつらい仕事に感じる。カレー鍋は何度洗っても落ちない。

友人に「ケトルでお湯沸かしてかければ〜」とよく言われるけど、そこまでするならレトルトを食べたい。

さすがにお風呂はお湯が出るのだけど、他の人の家にはある給湯器がない。同じくらいボロボロのアパートに住んでいるお友達の家でも、給湯器は家の中に設置されていた。ボタンでお湯のスイッチを切り替えたり、できるはずなのにできない。



洗濯機用のコンセントはない

モーリフォトエッセイ#2

洗濯機置き場がベランダにあるのに、コンセントを挿す場所も無かった。前の住人は洗濯物どうしてたんだろう。真冬も窓の隙間から家の中にコードを引っ張っていたんだろうか。窓際にコンセントがあるけど、毎回家の中に引くと砂や虫が入る。実際引っ越した当初、駆除会社が入ったので害虫は出なかったものの、部屋の電気からてんとう虫が出ることが多かった。

大家さんに相談してみると、すぐにコンセントの取り付け工事を手配してくれた。キッチンのお湯が出るようにはされなかった。

来客用の覗き穴もない

モーリフォトエッセイ#2

築年数古めのアパートなので、ピンポンや覗き穴も付いていない。在宅時にドアを叩かれるといまだに飛び上がるくらいびっくりする。

よく見ると、部屋それぞれドアの作りが少しずつ違って、部屋によって覗き穴がついていたり、鍵穴がおしゃれだったりする。ドアがズタボロの部屋もあり、相当長く住んでるかみんな勝手にカスタマイズしているのかもしれない。木のドアは住んでから気づいたけど、左右がかなりすり減っていて隙間風が入るので、せっせと隙間テープを使って塞ぐ。

だんだん住んでいくうちに、覗き穴は防犯用になくてもいいかと思い始めてしまった。

不思議なスイッチがある

モーリフォトエッセイ#2

いろいろな物がないアパートだけど、玄関には謎のスイッチがある。

玄関には4つ電源スイッチがあって、ひとつは"玄関兼キッチンの電気"、ふたつめは"バスルームの電気"、三つ目は"換気扇"、四つ目は押しても何もつかない。一個はフェイクなのか。引っ越した当初、どこかがついているんじゃないかと何回も入り切りして電気のつく場所を探したけど、どこもついていなかった。いまだ謎だけれど、おそらくドアの外に電気がつけられるのではないかと思っている。

そんなボロアパートも来年の春で8年になる。私は今月で29歳になった。これからも住むかはまだわからない。

 

Profile:モーリ
ライブフォトグラファー / WEBライター
東京でバンドや人を撮影しています。ときどき文章。
その他、ライブ写真やアーティスト写真、ポートレート、アパレルEC撮影などで活動中。
(WEB:https://mo-ri.myportfolio.com/ instagram:@lemonadeblue24  Twitter:@sadistic24 )

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