2018年8月15日、漫画家のさくらももこ先生の突然の訃報が届きました。53歳というあまりにも早い死の知らせを受け、ショックを受けたファンは多いでしょう。
私自身も中学のころから先生のエッセイや漫画に親しんでおり、作品を楽しみにしていたファンのひとりです。今後新たに先生が生み出される作品に触れることができないと思うと、残念でなりません。
先生は、ちびまる子ちゃんを初めとする魅力的なキャラクターを多数生み出してこられました。数々の作品の中で、私がもっとも魅了されたのは、名作と名高いギャグ漫画『コジコジ(COJI-COJI)』の主人公コジコジです。今回の【名作ヒロインに学ぶ♡幸せ女子になるヒント】では、コジコジの魅力について紹介します!(※コジコジは、男でも女でもない謎の生命体です)。
名言だらけの『コジコジ』
『コジコジ』は、メルヘンの国に住む主人公コジコジと、その仲間たちとのささいな日常を描いたギャグ漫画です。
「『コジコジ』は読んだことがないけど、コジコジの名言は知っている」という人も多いほど、名言が多いのもこの作品の特徴です。
ここで代表的なコジコジの名言をご紹介しましょう。
コジコジの名言1
先生「キミは向上心がなさすぎる。毎日一体何をしているんだ」
コジコジ「えっ、毎日? あのね、空飛んで、遊んでね、そんでおかし食べて、山に行って遊んだり、海に行って遊んだりね、あと寝たりしてるよ」
先生「なにっ!? 遊んで食べて寝てるだけじゃないかっ」
コジコジ「えっ悪いの? 遊んで食べて寝てちゃダメ? 盗みや殺しやサギなんかしてないよ。遊んで食べて寝てるだけだよ。なんで悪いの?」
コジコジの名言2
先生「キミはえらくなりたくないのかっ。立派なメルヘン者になりたくないのかっ。世界中の人に愛されたくないのかっ」
コジコジ「先生今、お腹すいたでしょ。大きい声だしたから」
先生「(略)コジコジ、キミ、将来一体何になりたいんだ。それだけでも先生に教えてくれ。なっ」
コジコジ「コジコジだよ。コジコジは生まれた時からずーっと。将来もコジコジはコジコジだよ」
(『コジコジ(COJI-COJI)』1巻 P15-17抜粋)
いかがでしょうか?
私はこの部分が大好きで、1巻をとくに何度も読み返してしまいます。(4巻も最高ですが)。
コジコジは「不満・不足を感じない」存在
以上の名言から分かることは、コジコジは「自分以外の何かになろうと思ったことがない存在」であり、「現状に不満や罪悪感がまったくない存在」だということです。
コジコジは空気が読めないデリカシーのない生き物で、実際にいたらちょっと困った存在になりそうではあるのですが、それでもコジコジが人気のキャラクターになり得たのは、この「向上心のなさ」「欲のなさ」故ではないか、と思います。
ほとんどの人間は、「現状を変えたい」「より良くなりたい」と思っています。「向上心を持って努力する」ことができない人は、そのことに罪悪感を抱くことが少なくありません。そういった現実世界を生きている人にとって、コジコジのように、無欲で現状に満足できる存在は、憧れであり、癒しになり得るのです。
名作ヒロインに学ぶ♡幸せ女子になるヒント3:「無欲・現状肯定」でも罪悪感を抱かなくていい!
夢を持つこと、目標を定めること、向上することを是とする世の中には様々なプレッシャーがあります。
・夢を描いて、その夢に向かって具体的な行動を起こそう
・もっと綺麗になるために最新のファッションやメイクを取り入れるべし
・有意義なことをしないと。時間を無駄にしたらもったいない
などのメッセージは、目標に向かって努力することが好きな人にとっては奮発材料になるかもしれませんが、「自分には何の目標もない」「現状維持がいい」という人には、「そのままのあなたではダメ」と責められているように聞こえてしまう場合もあります。
そういう方には、ぜひ『コジコジ』を読んでいただきたいと思います。夢や目標がなくても、そういう自分に嫌悪感を抱かず、自分を認められていれば、そういうあなたも誰かの「憧れ」「癒し」になれる可能性が多いにあることをコジコジは教えてくれます。
愛され女子になるには、「こんな自分じゃダメだ」と自己嫌悪になり無理やり変えようとするよりも「今の私でもいいんだ」と受け入れる方に力を注いだ方が近道なのかもしれません。
【PROFILE 今来今/Imakita Kon】
映画・舞台・漫画が好きなフリーライター。映画評・書評・恋愛コラムを執筆中。