在上映中の『クレイジー・リッチ!』は、「彼氏の実家を訪れてみたら、実は大富豪で、ヒロインは彼の母親や嫉妬に狂う女性たちから受け入れられず苦しむ。しかし、泣き寝入りせず戦い、最後には…」というストーリー。
これだけ読むと、「はいはい。よくあるハリウッド映画ね」と思うかもしれません。たしかに、大筋に目新しさはありませんが、『クレイジー・リッチ!』には、これまでのハリウッド映画にはみられなかった要素も盛り込まれています。
『クレイジー・リッチ!』のここがすごい!
私が一番驚いたのは、アジア人男性の描かれ方です。ハリウッド映画において、アジア人男性といえば、ビジネスの商談シーンで添え物程度に扱われる冴えない中年日本人や、脇キャラのコミカルなオタク、などが多かった印象ですが、なんと、『クレイジー・リッチ!』では、アジア人男性が、めちゃくちゃセクシーに描かれているのです!!
これまでのハリウッド映画で、アジア人の男性のシャワーシーンが魅力的に描かれていたことってあったでしょうか? この映画は、オールアジア人キャストで、アジア人の魅力(とくに男性の魅力)をきちんと描いた史上初のハリウッド映画ではないかと思います。
『クレイジー・リッチ!』が描くのは単なる格差婚ではない
さて、『クレイジー・リッチ!』では、「貧しい家庭で育った女性」と「大富豪の男性」という経済的な格差恋愛が描かれています。と同時に、文化の差も大きなテーマとして提示されています。
ヒロイン・レイチェルは、アメリカで育った中国系アメリカ人。一方彼氏の大富豪ニックは、中国系シンガポール人。見た目は同じ中国系でも、育った環境や価値観は異なります。
ニックの母であるエレノアは、古きよき中国の価値観に従って、結婚を機にケンヴリッジ大学を退学し、家族に尽くしてきた女性。一方のレイチェルは、NY大学で経済学の最年少教授を務める仕事に情熱を注いでいる女性で、ふたりの価値観はまったく異なります。
エレノアは、「情熱を追う、なんてすごいアメリカ人的」とレイチェルのことを揶揄し、「愛する人のために自分を犠牲にすることができない、自己中心的な女性」とみなすのです。
【ネタバレあり】名作ヒロインに学ぶ♡幸せ女子になるヒント6:愛する人の幸せを優先する
エレノアに徹底的に嫌われ、「you will never be enough(絶対にあなたはこの家ではやっていけない)」とまで言われたレイチェルは、一時はアメリカに逃げ帰ることを考えますが、親友に励まされ、逃げずにニックの家族と向き合うことを決めるのです。
そういった勝気な姿をみてニックはレイチェルに惚れ直し、プロポーズ。しかし、レイチェルは断ります。家族に認められていない自分と一緒になるためには、ニックは家族との縁を切らなければならない、と知っていたからです。
レイチェルは自分の幸せではなく、ニックの幸せを考え、身を引きます。それを知ったニックの母・エレノアは、レイチェルの中にも自分と同じ、「愛する人を第一に考えて行動する気持ち」があることを知り、ふたりの結婚を許可するのでした。
エレノアは、文化的背景のまったく異なるレイチェルのなかに、自分と同じ強い気持ちがあることを感じ、レイチェルを受け入れようと決意したのです。
レイチェルが自分の幸せだけを考えるような女性だったなら、「お金目当ての外国人」として一生ニックの家族から受け入れられることはなかったでしょう。
文化や経済格差を超えて、周囲から受け入れられるためには、「愛する人の幸せを優先する」という決意が必要だったのです。
PROFILE 今来今/Imakita Kon】
映画・舞台・漫画が好きなフリーライター。映画評・書評・恋愛コラムを執筆中。